ツキネコカフェ「猫の問題の根底には、必ず人間の問題がある」|推し猫グランプリ2025特別インタビュー

推し猫グランプリで毎年のように上位受賞を続けている、北海道札幌市の「ツキネコカフェ」様。2025年は準グランプリを受賞されました。

2020年の夏に取材をさせていただいた際には、『譲渡視野の預かり』や『永年預かり制度』など、より多くの人に譲渡を可能にする取り組みを発案・実行されていました。

また、多頭飼育崩壊の厳しい現状を赤裸々に公開し、行政との連携も見据えて活動を進めていると語ってくださいました。

あれから5年。制度の活用や行政との連携に、どのような進展や変化があったのでしょうか。

副理事の滝澤様が、今回もリアルな現状を率直にお話くださいました。

北海道の実情を知らない方にも、他地域で頑張られている保護活動家の方々にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

前回受賞時のインタビュー記事

    

◎『ツキネコカフェ』とは?基本情報

(公式ホームページより引用)

NPO法人 猫と人を繋ぐツキネコ北海道 が運営
・公式リンク集:https://lit.link/tsukinekocafe
・ホームページ:https://tsukineko.net/
・アメブロ:https://ameblo.jp/tsukineko-hokkaido/
・Instagram:https://www.instagram.com/tsukineko_cafe/
・X:https://x.com/tsukinekocafe
・Facebook:https://www.facebook.com/tsukinekocafe/?locale=ja_JP

    

◎『推し猫グランプリ2025猫カフェ部門』準グランプリ受賞!

Q.『推し猫グランプリ2025猫カフェ部門』の準グランプリ受賞おめでとうございます!受賞を知った時のお気持ちや周囲の方の反応はいかがでしたか?

毎年参加させていただいていますが、一度はグランプリもいただいて、その後も何度も入賞させていただいていて、本当に嬉しいです。

里親さんやボランティアさんもグループLINEなどで一緒に喜んでくださって、たくさん応援してもらえていることを改めて実感しました。

でも少し、悔しいですね。「どうせなら次こそはグランプリを」と頑張ったんですけど……次はもっと拡散がんばります。

   

◎『譲渡視野の預かり』『永年預かり制度』に加え『永年後見制度』も設立

Q.前回の取材で、ツキネコ発案の『譲渡視野の預かり』『永年預かり制度』についてお伺いしました。その後、制度の活用は増えていらっしゃいますか?

『譲渡視野の預かり』とは?
譲渡することを前提とした猫の「預かり」制度。
まずは「預かり」という立ち位置でお渡しして、問題がなければ譲渡。なにかあればツキネコがサポート。返還も可能。
はじめて猫と暮らす方に好評。


『永年預かり制度』とは?
ツキネコ北海道で保護している猫を面倒が見れなくなるまで「預かる」制度。
期限に決まりはなく、万が一ご自身に何かあり飼育困難になった際にツキネコへ返還。
高齢や持病など様々な理由により飼育をあきらめてしまった方に好評。

『譲渡視野の預かり』『永年預かり制度』、どちらの制度もツキネコの運営において欠かせないものになっています。多くの猫ちゃんたちが、この制度によって温かい家庭に迎えられています。

特に『永年預かり制度』については、他県の保護団体さんからのお問い合わせや視察も多く、メディアにも取り上げていただいており、注目度が上がっています。

とはいえ、大々的な広がりはみえないですね。もっと多くの団体さんに取り入れてもらいたいという思いがある分、少し残念にも思います。

Q.『永年預かり制度』は、どうして他団体さんは取り入れないのでしょうか?

制度を導入されていない団体さんからは、「猫が戻ってきた時の対応が不安」という声をよく聞きます。

ツキネコでは、これまでに約650匹の猫を永年預かりに送り出してきましたが、戻ってきたのは33匹で、5%以下です。その数字はお伝えしているのですが、それでも不安を払拭するのは簡単ではないようです。

たしかに、10年後、20年後も団体が存続していなければ制度は成り立ちません。そのためには、次世代の人材を育て、継続して活動していく体制づくりが必要になります。

「まずは1匹やってみてはどうですか?」とお話しすることもあるのですが、なかなか一歩を踏み出すのは難しいようですね。

Q.『譲渡視野の預かり』『永年預かり制度』に加え、2023年に新たに『永年後見制度』も新設したとホームページで拝見しました。どういった制度でしょうか?

『永年後見制度』とは?
飼い主さまが入院や高齢による施設入所あるいは万が一お亡くなりになるなど、将来的にご自身で猫の飼育を続けることが困難になった場合に備えて、あらかじめツキネコ北海道に猫の所有権を移しておくことで、確実に猫の行き場を確保する制度。(公式ホームページ参照

『永年後見制度』は、ツキネコが構想して立ち上げたというより、実際のご相談をきっかけに生まれた制度です。

最初のきっかけは、ツキネコから猫を譲渡した里親さんからのご相談でした。まだお若い年齢で余命を宣告されてしまい、独身で頼れる親族もおらず、「自分になにかあったときは、2匹の猫ちゃんたちを引き取ってほしい」という切実な内容でした。

「そうならないように一緒に頑張ろうね」ってお声掛けはしていたんですけど、やっぱりお病気には勝てなくて……。

司法書士にも介入していただき、正式な手続きを行ったうえで、亡くなったときに金銭とともに猫ちゃんたちを引き取りました。

他にも、60代以降の高齢の里親さんから「自分たちになにかあったら猫ちゃんを引き取ってもらいたい。お金も渡すから」というお声などもあり、この制度を作りました。

現在、『永年後見制度』の契約は10組(23匹)で、実際にツキネコで引き取ったのは7匹です。

『永年預かり制度』と『永年後見制度』は似ているようで異なる制度なので、それぞれの内容を理解したうえで、ご活用いただければと思います。

今後は、遺贈なども含めながら、より安心して猫たちを託していただける体制を整えていきたいと考えています。

Q.『永年預かり制度』や『永年後見制度』の相談や手続きを通じて、どのようなことを感じられ、なにを伝えていきたいと思いますか?

私は、「飼育放棄が悪い」とは思っていません。年齢に関係なく突然体調を崩すことはあるし、年月が経てば家族構成や生活環境が変わることもあります。雪が多い北海道では「転倒による骨折でお世話ができない」などの相談もあります。

ただ、「なにかあったときに行き先がない飼い方はしてほしくない」と思っています。最低限、一時的でも猫を託す場所を考えておいてほしいと思います。飼えなくなったときに自分がどうできるのか、考えてほしいです。

そういったことも、SNSなどを通じて発信していきたいと思っています。

      

◎円滑な札幌市との連携と北海道特有の行政問題

Q.5年前の取材では「行政を巻き込んで動かなければならないと考え、社会全体のシステム作りを目指して取り組みをスタートしています」とお話されていました。その後、行政との関係はいかがでしょうか?

札幌市とは、うまく連携が取れています。

北海道は非常に広く、14の総合振興局・振興局(旧支庁)に地域が分かれているため、行政対応も地域ごとに異なります。その中で札幌市は、令和5年(2023年)に『札幌市動物愛護管理センター(愛称:あいまるさっぽろ)』を新設しました。それまで別々だった犬猫の収容施設と事務機関が一か所にまとまり、職員さんもSNSなどを活用して努力されていて、譲渡が進んでいます。

札幌市内の保護案件に関しては基本的に市が対応してくださっており、最近はツキネコへの相談も減りました。

愛護センター内のドッグランで譲渡会を開催させてもらったりもしています。来場者数も多く、うちの子たちもたくさん譲渡が決まり、ありがたく感じています。

また、うちが8年近く関わってきた多頭飼育崩壊の案件についても、飼い主さんが重い腰を上げてくれたタイミングで札幌市に相談したところ、協力してくださいました。飼い主さんが生活保護を受けており、受給者として市も快く受けてくださり、とても感謝しています。

札幌市とは、今後も協力しあっていければと思っています。

Q.札幌市とは良い関係で猫たちを守る取り組みが進んでいるのですね!では、札幌市以外の地域では、状況は異なるのでしょうか?

札幌市以外、北海道全体となると、状況は大きく変わります。

いま、釧路市で多頭飼育の家が3件、合わせて70匹くらいの相談を受けています。でも、保健所ではほとんど対応してくれません。

なぜかというと、北海道には犬猫を収容する場所が少ないからです。いまだに猫の収容場所がない保健所もあり、実際に私が問い合わせをした保健所では、「給湯室の一角にケージを置いて5匹までなら」と返答をいただいたこともあります。

担当も3年ほどで変わることがあり、引継ぎも曖昧なことも多く、多頭飼育崩壊のように長期での対応が必要な案件では、話が振り出しに戻ってしまうことも少なくありません。

2024~2025年にかけて道央・道東・道北・道南の4地区に動物愛護センターが設立されましたが、猫はそれぞれ20匹くらいまでしか収容できず、多頭飼育案件には対応できないことが多いです。

また北海道は広大なこともあってか、振興局の中の動物管理部門、犬猫を収容する保健所、愛護センター同士の横のつながりにも課題が山積しているのが実状です。

北海道全体で考えると、行政との連携はまだまだ難しいですね。

    

◎他の保護活動家との連携による猫の救出

Q.SNSで拝見していると、他県からの保護猫の受け入れも行っているようですね。どうして連携されているのでしょうか?

沖縄県・福岡県・熊本県から猫を空輸で受け入れ、うちで譲渡に繋げる活動をしています。頭数は増えていて、昨年度は全体の約3割を占めました。

地域によって、どうしても譲渡が進みにくい事情があるんですよね。例えば沖縄だと、温暖な気候のため真冬でも子猫が産まれていて、過酷な環境で暮らす猫が多くいます。でも沖縄では、外で猫が暮らすことに違和感が少なく、お金を出してまで猫を飼う人は少ないです。

そのため、うちが可能な範囲で引き受けて譲渡に繋げています。

基本的には医療行為が終わった子を受けるので、うちも医療費をかけずに譲渡に繋げることができ、送り出す側・受け入れる側の双方にメリットがあります。

Q.北海道内の他の保護団体さんとの繋がりもあるのでしょうか?

北海道には、比較的規模の大きな保護団体がうちを含めて5団体あります。密接に連携しているわけではないですが、グループLINEを活用して、意見交換や情報共有は行っています。先ほどお話しした釧路の多頭飼育案件についても、他団体に相談しています。

数年前の年末年始には、他団体と多頭飼育崩壊の解決に向けて協力し合ったこともありました。糞尿だらけのゴミ屋敷でした。打ち合わせを重ねて、捕獲・搬送などの役割を分担して、愛護センターにも連携していただき、解決に向けて取り組みました。

この案件は、“こうした問題が実際に起きていること”、“保護団体が連携して解決できたこと”を多くの方に知っていただきたいと考えていました。しかし、飼い主さんが生活保護を受給されていたこともあり、自治体の福祉的な配慮の観点から案件を公開することができませんでした。その点は、とても残念に感じています。

「この状態になるまで、こんな頭数になるまで、誰も知らなかったの?」「もっと早い段階で誰かが連絡をくれていれば、こんなに可哀そうな猫たちが増えなくて済んだのに……。」そう思ってしまいます。

だからこそ、多くの人に実際に起きていることを知ってもらいたい。

行政との連携は、いろんな意味で難しいですね。

   

◎今後の目標や活動ビジョン

Q.ツキネコカフェ様の今後の目標やビジョンを教えてください。

なにより、団体を持続させていくことが大切だと思っています。『永年預かり制度』『永年後見制度』を行っている以上、私たちは永続的に存在し続けなければならない団体です。今後はNPO団体としてより強固な組織づくりを進め、持続可能な活動を目指して、尽力していきたいと思っています。

また「猫をとりまく現状を伝えて、注意喚起していきたい」とも思っています。

私達NPO団体は、猫のレスキュー活動を通して、さまざまな社会的な問題に直面してきました。社会的孤立、心の病、生活困窮など、人の問題が背景にあり、その結果として猫たちが不幸になっているケースも少なくありません。

私達はいつも猫のレスキューだけに留まらず、人間の問題にも寄り添うようにしています。ゴミや糞尿で荒れてしまったお家の片付けや清掃をボランティアで行ったり、再び普通の生活に戻れるよう、行政機関への働きかけを行ったりもしてきました。

猫の問題の根底には、必ず人間の問題があります。

そういった現状も、「モノを言える団体」として、発信していきたいと思います。

     

とはいえ、今はなにより施設の対応が必要です。カフェのシェルターは築60年くらいで、老朽化がひどい状態。家賃も上がり、拠点を変えることも検討しないといけません。

また保護シェルターも増設したいし、困っている人の預かりとしてペットホテルも充実させたいし、課題は山積みです。笑

   

◎『ツキネコカフェ』からメッセージ

Q.読者や応援してくださる皆様に伝えたいメッセージをお願い致します。

メディアの影響もあり、良くも悪くも保護猫ブームです。支援でも、情報シェアでも、なにかひとつ行動するだけで、猫ちゃんが幸せになる一歩に繋がります。その積み重ねで、一人でも、一匹でも、みんなが幸せになれたらいいなと思います。

私たちも大きなことはできません。私は活動に関わりはじめて15年、いろいろなことを経験してきました。それらも活かしながら、今後10年、20年も引き続き、積み重ねで幸せな猫を一匹でも増やしたいていきたいと思っています。

Q.第7回『推し猫グランプリ2026』もご参加いただけますか?

もちろんです! 次はグランプリとります! 笑

  

◎『ツキネコカフェ』さんインタビューまとめ

5年前の取材からさらに歩みを進め、制度を新設し、行政と連携し、他団体とも協力しながら猫たちの命を繋ぎ続けているツキネコカフェ様。

『譲渡視野の預かり』『永年預かり制度』に加え、『永年後見制度』も確立され、猫たちのために永続的に活動を続けるという強い覚悟が感じられました。

そしてたくさんのお話の最後に、「猫の問題の根底には、必ず人間の問題がある」ということを教えてくださいました。

保護猫ブームといわれる今だからこそ、私たちは“かわいい”の先にある現実にも目を向ける必要があります。1匹でも多くの猫が幸せになるよう、一人一人ができることを考え、行動を積み重ねていきましょう。

 

現状を語るときは、溢れるように言葉が続く滝澤様。

けれど、ご自身の想いを話されるときは、少し照れながら、迷いながら、言葉を選び、かみしめるように語られていました。

「モノを言える団体であろう」と厳しい言葉を発するその裏には、ただただ、一匹でも多くの猫が穏やかに生きていける未来を願う、静かで強い優しさがありました。

    

取材/文:大久保ユカコ

 

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