保護猫カフェととの森「1匹でも多くの命を助けたい」|推し猫グランプリ2021特別インタビュー

『推し猫グランプリ2021』で6位に入賞された『保護猫カフェととの森』さん! シェルター・保護猫カフェの運営を通じ、さまざまな事情で保護された猫ちゃんの受け入れを行なっているほか、新施設「サナトリウム」のオープンへ向けた準備に尽力されています。

一匹でも多くの猫たちの命を繋ぐために、『フィーラインととの森(任意団体)』として活動の幅を広げるととの森さんへ、活動に至ったいきさつや現在のご活動、今後の未来像などについて伺いました。

◎『保護ねこカフェととの森』とは? 基本情報・経歴

・運営:任意団体『フィーラインととの森』
・代表:今村瞳さん
・2016年5月、千葉県船橋市に「保護ねこカフェ ととの森」をオープン。
・2019年7月、クラウドファンディングによりシェルター開設。
・2022年3月、病気や高齢猫などストレスを受けやすい猫の為の療養施設「サナトリウム」をオープン予定
・シェルター、カフェ併せて年間約150頭の猫たちを里親様の元へ送り届けている。

◎『推し猫グランプリ2021』第6位入賞!

Q.『推し猫グランプリ2021』第6位入賞おめでとうございます! 結果を知った時の率直な感想や周囲の方の反応を教えてください。


保護猫の療養施設を造るために、クラウドファンディングをはじめた時期に「推し猫グランプリ2021」に推薦していただきました。

はじめての参加でしたが、「優勝・入賞した賞金で、猫たちの新しい施設をつくりたい!!」と、カフェスタッフやボランティアさん達も積極的に協力してくださいました。

優勝こそしませんでしたが、第6位入賞という素晴らしい結果! 推していただいた皆様に心より感謝いたします。新しい施設という目標に一歩進めた安堵と入賞の嬉しさでいっぱいでした。

保護猫カフェを始めて6年。

多くの皆様に喜んでいただける場所になった事が形として表され、感慨深くもありました。周囲の方も、我が事のように、喜んでくださいました。

Q.受賞を知った時の「猫スタッフ」さんの反応はいかがでしたか?

「猫スタッフ」初代店長、2代目店長はシェルターでお客様にご褒美をもらって満足顔でした。

3代目猫店長は、カフェで「何事?」という感じでした(笑)

 

■第5位入賞となった当グランプリ結果発表ページには、数多くの応援コメントが溢れています。

カフェのみでなく、一緒にシュルターを併設して、多くの猫さんを幸せにされているのは大変だと思いますが、どうか世界中の猫さんの為に頑張ってください。微力ながら応援しています。

保護猫さんのことを第1に考えて、活動をされているカフェです。お掃除も行き届いていて、とてもきれいな居心地の良いカフェで、いつも元気をもらっています。

スイーツが充実していて、どれもこれも美味しそうです。猫さん達と遊べて、美味しいスイーツも頂けて最高です。猫さん達が、みんな保護猫さんなのも、凄くいいと思います。小さな命、でも大きな愛をくれます。どうか、一匹でも多くの命を繋いでください。

◎『保護猫カフェととの森』として保護猫活動を始めたきっかけ・熱意

◎活動を始めたきっかけや経緯、活動に対する想いを教えてください。

始めたきっかけは、通勤途中に“癲癇持ち・盲目”の生後1か月の三毛猫を拾ったことです(のちに「華」と名付けました)。

小さい頃から動物が好きで、子猫やヒナ鳥を拾ったりしていました。でも、保護した子たちが亡くなる辛さも知っていたので、成人して仕事をするようになってからは動物を避けて過ごしていました。

当時は保護猫にもくわしくなく、仕事でほとんど家にいない「華」のために、ペットショップで「華」の妹たちを「購入」しました。

「華」が家族になってから、7年。

  • もし、自分が病気になったら、この子たちはどうなるのだろう?
  • カフェと仕事場が同じ空間だったら、自分に何かあった時にお客様が気づいてくれるのでは?

そんなことを漠然と考えていました。そして、漠然とした想いを紙に描き、こんな施設があったら!こんな場所だったら!と妄想を膨らませていた矢先、偶然にも「カフェをやりませんか?」という話が舞い込んできました。

飲食経営0、保護猫活動0でしたが、「華」たちが最期まで幸せに暮らせる! という想いだけで保護猫カフェを始めました。そして、保護猫カフェとして活動を始めてから、さまざまな現状を思い知りました。

カフェでの活動をスタートしてからの6年間で、エアガンで撃たれた子、火で燃やされた子、真冬でも真夏でも外のケージに閉じ込められていた子など、、、本当にたくさんの子と出会い、多くを経験したと語るその言葉には、さまざまな想いが詰まっていると感じました。同時に、虐待された子たちが幸せになる姿に胸を打たれると語るととの森さんへ、さらに深くお話を伺いました。

 

Q.「ととの森」をオープンされてから現在に至るまで、特に印象に残っている出来事を教えてください。

とても1つには絞り切れませんが、特に印象に残っているのは以下の3つの思い出です。

1、オープン初日

保護猫カフェ自体が少ない時でしたので、さまざまな許可をとり、適合する施設を造るまではとても大変でした。やっとオープンした初日、「うちの近くに猫カフェができるので、楽しみにしていたよ」と、多くのお客様に喜んでいただいたことは今でも忘れられません。

2、シェルターを作るために初めて挑戦したクラウドファンディング

保護猫カフェだけでは狭く、どうしても多くの命を救えないと思い、シェルターを作ろうと考えました。ただ、自分の力でなんとかしなくてはならない!と、クラウドファンディングに取り組むことに最初は強い抵抗感があったんです。

そんな時に、クラウドファンディングすることを後押ししていただいた里親様、保護主様たちの言葉は、私にとって生涯の宝物です。

クラウドファンディングでの目標を達成したときは、同じ想いの人たちがいて、その方々が私に想いを託してくださっていること、多くのご支援者様の善意のお気持ちに心から感動しました!

3、療養施設「サナトリウム」への挑戦

2021年2月より開始した療養施設「サナトリウム」は、クラウドファンディングの資金だけでは足りない大きなプロジェクトで。

少しでも支出を抑えるために、今回はたくさんの方から、たくさんの“労力”を提供してくださいました。樹木の伐採、整地、垣根造り、花壇、内装工事など、すべてボランティアさんによるものです。

1年という期間を要しましたが、2022年3月、猫と人が一緒に癒され、穏やかな時が流れる場所がやっと完成します。猫たちが繋げてくれる、優しい人たちとのご縁、ひとつひとつが大切な財産です。

 

Q.譲渡先が決定した時の率直なご感想や想い、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

譲渡先が決定したときに感じるのはまず、ひと安心と寂しさです。 幸せに暮らしている姿をみて、改めて「良かった!」と思います。

『ふれあい→トライアル→譲渡』までは複数回お越しいただき、 ご家族の方とお話をするため、 ひとつひとつに物語や思い出があります。

★ご家族との思い出

ご家族で印象に残っているのは、カフェオープン間もない頃から頻繁にご来店いただいていた親子の方。人と接する事が苦手なおとなしい小学生の女の子と、子育てに悩んでいたお母さんでした。彼女が中学に入った頃、カフェの保護猫の里親になりました。

その後、高校生になり、カフェアルバイトとシェルターボランティアをするように。その頃にはお母さんも一緒に毎週日曜日ボランティアをするようになっていました。物静かでおとなしい性格はそのままでしたが、2匹目の里親にもなりました。今年、高校を卒業して大学進学が決定。猫を通して成長した姿に感慨深く、来店初日のことをお母さんと共に思い出しておりました。

★保護ねこさんとの思い出

保護猫で印象に残っているのは、茶とらの「とろ」です。ファミレスでうずくまっていたところを発見されましたが、AIDSキャリアで片目がなく、もう片目は眼球から液体がでている状態。

中学生の女の子とお母さんが抱っこして連れてきました。お父さんが猫アレルギーのためお家で飼うことはできないけど、 病院で初期治療もしてくださり、受け入れ体制が整うまでの数日間お世話をしてくださいました。

とろは推定6歳くらいで、両目が見えないキャリアの子。それでも、人は大好きでした。ととの森で看取ることになると思っていましたが、最終的には良いご縁に恵まれて家族にお迎えいただきました。

お迎えしていただいたのは、猫ちゃんを飼ったことのないおばあちゃん、お母さん、養護学校に通う小学生男子の3人暮らしのご家庭でした。お友達のお家で猫をみてから、どうしても猫を飼いたいという男の子。 猫を飼うことに不安があるお母さん。シェルターで2か月間ボランティアをしながら、猫ちゃんとの生活を体験してもらいました。

そして、彼が家族にお迎えしたいといった子が、AIDSキャリア、盲目のとろだったのです。とろは、「尭明」と名付けられ、彼と同じお布団で寝ています。子どもたちの純粋な想いが繋いだ命、「日本もまだまだ大丈夫」と安心しました。

 

◎新施設「サナトリウム」にかける想い

Q.カフェや新施設「サナトリウム」には、猫ちゃんのためのこだわりがたくさん詰まっていることがうかがえます! 特にこだわっているポイントや想いなど、よければお聞かせください。

ストレスを減らし、食事を大切にすることです。ストレスを受けやすく、繊細な感情を持っている猫もいるため、室内にいて不特定多数の人に会うことによるストレスを少しでも減らすことを心がけています。

Q.2022年の「サナトリウム」のオープンに向け、『フィーラインととの森』の構想や未来像をぜひ教えてください!

クラウドファンディングを始めたきっかけは、 腎臓病でなくなった地域ねこ「ちび」を助けられずに 看取ったことです。が、構想そのものはカフェを作った時からありました。

「サナトリウム」は自然と人と猫が共に保養できる場所です。 カフェ、シェルターには不特定多数の方が毎日ご来場されるため、 猫にとってはきっと迷惑なことかもしれません。

家族猫のように、専用の空間や広い空間を作ってあげることは難しく、 病気治療に専念することもできません。 病気治療中の子、免疫力が少ないキャリアの子、高齢の子、出産間近な子のためにどうしてももう一つ施設が必要でした。

 

(2022年1月時点の)現在では、約9割完成しました!

AIDSキャリアの「りんご新館」は、庭にあった大樹をみんなで移動し、駆虫し、自然のキャットタワーをつくりました。ときどき木の上から見下ろされています(笑)

りんご新館の後ろには、「白血病キャリアのみかん部屋」とかかりつけ病院と提携している「簡易診察室」があります。 車移動のストレスを避けるため、診察室は長年の希望でした。ガン、免疫不全などのその他の病気の子たちがいる長屋形式の「3連長屋」(実際は4部屋あります)は、農機具入れの倉庫を改修してつくりました。

母屋の2階は、お世話体験ができるお部屋にしています。母屋1階は、医療費などを捻出するための「カフェ」になり、 グッズ販売などもします。 広い庭には、ウッドデッキとピザ窯を作りました。 ご迷惑をかける近隣の皆様、ボランティアさんや保護主、保護活動をされている方に開放し、楽しんでいただく場所です。

カフェオープンから現在までは、皆様の御協力を頂きながらひとりでやってまいりました。

ですが、「フイーラインととの森」はひとりではなく、想いを同じくする人と一緒に、 しっかりとした形でシェルター、サナトリウムを維持運営していくための団体として掲げました。これから先も若い人達に受け継いでいただきたいです。

◎実際にクラファンに挑戦されてみての結果やご感想をぜひお聞かせください。

クラウドファンディングを始めるには、かなり抵抗がありました。「自分でできない事を他人にお願いするのか?」「コロナでみんなが大変な時に、お願いしてよいのか?」など、いろいろと考えることも多かったです。

が、今となっては、挑戦して本当によかったと思います。

  • ひとりの力ではできないこと。
  • 同じ想いで、その想いを支援という形で託してくださっていること。

保護、譲渡、病気ケアなどをしながら、思うように進まないサナトリウム……。くじけそうな時、皆様の応援メッセージが支えになりました。

あと一息。 みなさまの温かな熱い想いを形にし、お披露目できます。応援していただいた方に喜んでいただけること、 ひと時でも、1匹でも幸せだと感じてくれる猫と人が増えることを願いながら、活動を続けます。

Q.最後に『推し猫グランプリ2022』へ向けた意気込みをお願いいたします。

残念ながら、保護猫カフェは、2022年2月末日で閉店します。

カフェ部門以外で、参加できること。参加し、優勝することで、応援していただいた皆様への御恩返しをしたいです。

 

◎保護猫カフェととの森様 インタビューまとめ

オープンから今日に至るまで、命と向き合いながら前へ前へ突き進み続ける『ととの森』。代表の今村さんが語る言葉からは、深い愛情とかたい決意がひしひしと伝わりました。

2022年からは新しい形となる『フィーラインととの森』。多くの人の愛と行動によって生み出される空間は、猫たちにとって楽園のように過ごしやすい場所になることでしょう。

命と向き合う大切さ、重み、寄り添う心—。

多くを次世代へと継承してく『ととの森』の皆さんのご活躍から、今後も目が離せません。

 

取材担当/南マイコ

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