里親募集型保護猫カフェCafeGatto「万が一の際もうちの子を守れる仕組みを」|推し猫グランプリ2024特別インタビュー

『ペット信託』をご存じでしょうか? 飼い主様にもしも何かがあったとき、我が子を確実に守るための方法です。

今回取材させていただいた里親募集型保護猫カフェCafeGattoさんは、他とは少し違うカフェでした。『ペット信託』など我が子の将来を守る方法について相談ができ、万が一の時に愛猫ちゃんを安心して任せられる場所として作られた場所です。

なぜそのような制度が必要で、なぜそこに着目して始められたのか。CafeGattoの総支配人で行政書士である磨田(とぎた)様に、お話をお伺いさせていただきました。

「悲しい猫を増やしたくない! なんとかしたい!」という気持ちだけで、たったひとりで始められた熱い想いは、現代の動物業界に必要不可欠な制度の確立につながっています。

 

◎『里親募集型保護猫カフェCafeGatto』とは? 基本情報・経歴

・福岡県古賀市にある保護猫カフェ
・総支配人:行政書士  磨田 薫 (とぎた かおる)様
・ホームページ:https://nekocafe-gatto.com/
・ブログ:ameblo.jp/nekocafegatto/
・Instagram:instagram.com/cafegatto.neko/
・YouTube:youtube.com/@cafegatto7387/featured
・X(旧Twitter):x.com/NekoCafegatto
・Facebook:facebook.com/CafeGatto/

◎『推し猫グランプリ2024』入賞!

Q.『推し猫グランプリ2024』入賞おめでとうございます!受賞を知った時のお気持ちや周囲の反応はいかがでしたか?

過去何年かエントリーさせていただいてるんですけど、「コメントしたよ」とか「投票したよ」とか、自分の元に直接届く応援の声が増えていると感じ、嬉しく思っています。

またサイト内の応援メッセージを読ませてもらったら、うちを知らなかった人から「活動を知って投票しました」などのお声もあり、エントリーさせてもらったことによって頑張りを返してもらったような気持ちになり、日々のやりがいに繋がりました。参加してよかったです。

◎『里親募集型保護猫カフェCafeGatto』 や保護猫活動を始めた経緯とその原動力

Q.保護猫カフェを始めたきっかけや経緯を教えてください。


▲画像引用:ホームページより引用

私は行政書士として『ペット信託』などを活用して、犬や猫の万が一に備えるお手伝いをしています。その中で、頼る人がいない、引き取り先がいないなどの相談も多くありました。

そこで身寄りがない人でも頼れるような『引き取りできる施設』を探していたのですが、なかなか見つからなくて、なら作ってしまえ! ということでこのカフェができました。

Q.では、行政書士としての活動はなぜ始められたのでしょうか?

活動をはじめる一番最初のきっかけは、大学1年生のときでした。

猫に囲まれた生活から離れ、一人暮らしになるとやっぱり猫恋しくて。笑 猫を探して近所を歩いていると、近所にたくさんいる猫はゴミを漁っていたりと、みんな幸せそうじゃないんです。

「なんでこんな子たちがいっぱいいるんだろう?」と調べ始めて、『殺処分』という現実をはじめて知りました。18歳の私にはすごく衝撃的で……。「なんとかしたい!」と強く感じたことが始まりです。

自分にできることを模索し、大学を辞めて動物看護の専門学校に2年間通い、福岡市内の動物病院で働き始めました。

でも病院で見聞きする猫も、みんなが幸せそうではなかったんです。病院前に捨てられる子もいたし、飼い主さんが高齢で最期まで看られるかわからないなんて子もいて。病院もすべてのケースに対応できるわけではなく、看護士として無力さを感じました。

「他になにかできることはあるんじゃないか」と考え直し、不安な飼い主さんに「こうしたらいいですよ」と助言・提案ができる人になりたい! そのためには法律を知らないとなにもできない! そう思い直して、行政書士になりました。

独学で5年かかりました。笑 29歳のときに合格し、すぐに開業してから12年、今に至ります。

Q.驚くほどの行動力ですが、その原動力はどこから来るのでしょうか?

「猫の殺処分をなくして、幸せな猫を増やしたい。」という想いだけです。ただただ、猫が好きなんです、はい。笑

 

◎『ペット信託』など、万が一の時の制度とは

Q.万が一のときに愛猫を守る制度について教えてください。

「もし自分に万が一のことがあったとき、どうにかしてうちの子を守ってあげたい。その方法はないものか……」と真剣に考え悩んでいる飼い主さんからたくさんのご相談を受けてきました。

また、万が一が起きてしまった末の悲しいお話もたくさん見聞きしました。

そうならないために、飼い主さんの万が一の時に備える方法として、『ペット信託』『ファミリーサポート制度』『愛猫たすけあい制度』の3つの制度を提案しています。


▲画像引用:ホームページより引用

『ペット信託』『ファミリーアニマルサポート制度』は、公的証書として取り決めを作成しておくことで、飼い主さんが飼育できない状況になったときに、事前に決めていた引き取り先にペットと飼育費を確実に渡すことができる制度です。

愛猫さんの引き取り先は、ご家族や知人はもちろん、Cafe Gattoを指定することも可能です。

『愛猫たすけあい制度』は、保護猫の応援をすることで、ご自身の子の将来も守ることができる助け合いの制度です。

詳しくは、ホームページをご参照いただけると嬉しいです。「自分は大丈夫」と思わず、ぜひ考えていただきたいです。

⇒Cafe Gattoホームページ『愛猫を守るには

Q.遺言書との違いはどこでしょうか? また費用をかけて公的証書にする必要性があるのはなぜでしょうか?

遺言書は、亡くなった時にしか効力がありません。信託などであれば、病気や不慮の事故などでやむを得ず愛猫さんと暮らせなくなった場合でも対応可能です。

公的証書にする理由は、万が一のときに時間のロスなく、ペットを引受先に託すことができるからです。また亡くなったときや意識がないときなどは、相続によるトラブルを避けることにも役立ちます。

Q.実際に契約される方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

信託に限らず遺言書とかも含めると、わんちゃんもねこちゃんも合わせて、これまで50件くらい対応させていただいています。

実際にお手伝いした(執行された)のは、今のところ2件です。

Q.素晴らしい制度ですが、認知の少ない中、現在に至るまではどのような苦労があったのでしょう?

開業当初の12年前は今以上に認知が低かったので、まずはプレスリリースからでした。新しいものは取り上げてもらいやすく、テレビや雑誌、新聞の取材を受けることができました。また行政からの依頼でセミナーをしたりも。ひとりふたりの受講者からでしたよ。笑

それらによって 「あっちで見た、こっちで見た」など何回か接触があった上で、話を聞いてみようと思ってくださる方が増えていったという感じです。

 

◎活動への想いと今後のビジョン

Q.インスタは1.7万人と驚くフォロワー数です!インスタに力を入れているとのことですが、発信において意識されていることはありますか?

私のおおもとには、常に「万が一に備えてほしい」という気持ちがあります。ペット信託などの認知は上がってきてはいますが、まだまだ自分事にする人が少ないです。

誰にでも万が一のときはくるから、どうしたら自分事として捉えてもらえるだろうかな、どうしたら伝わるかなって、意識しながら発信しています。

Q.今後の目標や活動ビジョンを教えてください。

病院を作ろうと思っています。猫専門で、東洋も西洋もわかるような病院を。

今うちの子たちは、病状に合わせてあちこちの病院に行っています。連れて行くのも大変ですし、なにかあったらすぐに看てもらいたいですし。病院運営がうまくいけば、収入にもなりますしね。物件など検討しはじめていて、数年以内には実現させたいと思っています。

あとは、病院と同時に『行き場のない猫たちが安心して暮らせる場所』を作ろうと考えています。

多頭飼育崩壊、行政への持ち込みなど、行き場を失う猫たちがとても多いです。たくさんの団体さんが受け入れたり、TNR活動(※)もされていますが、元いた場所に戻しても、猫が外で生きていくのはとても大変です。悲しいですが危害を加えられることもあります。だから、そんな猫たちを今以上に受け入れられる大きな施設を作ろうと思っています。

また、高齢の飼い主さんで誰にも相談できずに猫が増えてしまうというケースも多いので、高齢の飼い主さんと猫の見守りも、地域に根付いてやっていきたいと考えています。

※TNR活動とは?

引用:公益財団法人どうぶつ基金『さくらねこTNRとは』
外で暮らす猫たちを望まない繁殖から守り、一代限りの命をまっとうしてもらう活動です。

 

◎『里親募集型保護猫カフェCafeGatto』からメッセージ

Q.読者の皆様へ向けて、メッセージをお願いいたします。

なにかひとつ、行動に移してもらえたら嬉しいです。近くの活動されている団体にフードをひとつ送るでもいいし、なんでもいいんです。できることはたくさんあります。なにかひとつ、やってみてもらえると嬉しいです。

あとは、自分の子の将来を改めて考えてほしいです。飼い主さんの年齢は関係なくて、おうちの子がいる方は皆さん、「もしもの備え」をする必要があると知ってほしいです。

保護猫でも家猫でも、犬でも猫でも、飼い主さんがおうちの子を守ってくれないといけなくて。人生はどうなるかわかりません。今一緒にいる子を家族として最期まで大切にしてほしいんです。最期まで一緒にいられるように、考えてほしい。

その方法がわからないと思うので、「こんな方法があるよ」っていうのを、福岡から発信できたらな、と日々思っています。

Q.2025年も『推し猫グランプリ2025』を開催予定です。ご参加いただけますか?

はい、ぜひ参加させてください。来年はグランプリを狙いたいと思います!

 

◎『里親募集型保護猫カフェCafeGatto』さんインタビューまとめ

大きな声で笑いながら楽しくお話してくださった磨田様ですが、前例のないところからの出発、ここまでとんでもなく苦難な道だったと想像されます。

動物看護士や行政書士、保護活動、猫カフェ運営など様々な経験を通じたうえで、必要だと感じ確立していった制度。今の動物業界に必要不可欠なお話です。

しかし、まだまだ「自分事」として捉えて行動する人が少ないのが現状です。磨田様は「みんながもっと気軽に、当たり前のように我が子の将来を考えてほしい」と願っています。信託などの制度に限らず、まず考えてほしいと。

取材させていただいた私自身も、改めて考えさせられました。

自分になにかあったとき、我が子は安心して暮らせるのでしょうか? 不慮の事故など、その時は突然訪れるかもしれません。誰にでも起こりうる話です。

みんなで一度、考え直してみませんか。

我が子のためにも、世のすべての猫ちゃんのためにも、こういった考え方と制度が広まることが必要です。多くの人に伝えていきましょう。できることを、ひとつずつ。

 

取材/文:大久保ユカコ

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