保護ネコ施設CATS WELCARE「ねことひとのしあわせのために」|推し猫グランプリ2022特別インタビュー

「推し猫グランプリ2022」で第6位に入賞された保護ネコ施設「CATS WELCARE」さん!

代表の川越さんは2017年に小児科医院を開院され、現役小児科医との二足の草鞋で精力的に保護ネコ活動をされています。

動物保護施設のボランティアやTNRのサポート経験から、2019年に「ねこのしあわせのために ひとのしあわせのために」をコンセプトとした保護ネコ施設「CATS WELCARE」を設立されました。

そんな川越さんに、保護ネコ活動を始めたきっかけや今後についての想い、医療者の視点からのご意見や今後のビジョンなどをたっぷり伺いました!

◎保護ネコ施設「CATS WELCARE」とは?基本情報・経歴

▲画像引用:保護ネコ施設「CATS WELCARE」公式ホームページ

・運営:任意団体「CATS WELCARE」
・代表:川越 里佳さん(現役の小児科医)
・2019年末、保護ネコ施設「CATC WELCARE」を設立
・2020年よりサロンをオープンし、保護猫の譲渡スタート
・野良猫を減らし殺処分をなくすため、TNR(野良猫を捕獲し不妊手術をして元の場所に戻す)活動も実施
・2020年~2022年現在で98匹の保護猫たちが「CATS WELCARE」を卒業

 

◎「推し猫グランプリ2022」第6位入賞!

Q.「推し猫グランプリ2022」第6位入賞おめでとうございます!結果を知った時のお気持ちや周囲の方の反応はいかがでしたか?

保護ネコ施設「CATS WELCARE」は歴史が浅く、スタッフも少人数でやっているため、「入賞なんて、そんな大それたこと……」と思っていました。

入賞できたのは、みなさんがSNSで呼びかけ応援してくれた結果です。「自分たちが思ってた以上にたくさんの人が見てくれていたんだな」と具体的に実感でき、スタッフ共々嬉しかったです。心から感謝しています。

■当グランプリ結果の発表ページには、「CATS WELCARE」への応援メッセージが数多く載せられています!

活動内容も保護環境もスタッフさんもとても素晴らしく、もちろん猫達も幸せそうに過ごしていていつも感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。

いつも掃除が行き届いていて、匂い対策もちゃんとされてて、猫への愛情が感じられる猫カフェです。猫達もとても人馴れしていて撫でたり遊んだりするのが楽しめます。スタッフの方々も話しやすい方ばかりで会話も楽しいです。何度も行きたくなる猫カフェです。いつも応援してます!頑張って下さい!

いつも丁寧に1匹ずつのお世話をされ、新しい家族のところへいってもちゃんと見守ってくださるスタッフの皆様は素晴らしいと思います。こちらの施設からこれからも幸せになれる猫ちゃんが増えますように、いつも応援しております!

 

◎保護ネコ施設「CATS WELCARE」として保護猫活動を始めたきっかけ・熱意

Q.保護猫活動を始めたきっかけや経緯、当時の思いを教えてください。

もともと動物が大好きで保護活動をずっとしたいと思っていたので、最初はボランティアとして犬の保護施設などで活動していました。

10年ぐらい前から月1〜2回、TNRのお手伝いをさせていただくようになりました。サポート活動の中で、ネコの中でもすごく人馴れしている子や、子ネコもたくさんいたんです。

その子たちを見ていて、「誰かに引き取られたら、この子たちも幸せになれるのになぁ」と感じて。そんな子たちの“居場所”を作る仕事がしたいと強く思い、小児科を開業してから2年後、良い物件を見つけられたタイミングで、今の保護ネコ施設を立ち上げました。

Q.川越さんは現役の小児科医としてご活動されていますが、お忙しい中でどのように両立されていますか?

保護猫施設には現在スタッフが8名おり、他にもボランティアの方が一緒に活動してくれています。
小児科医としては自分がいなければ回らないため、保護猫施設のほうをスタッフに任せつつ、こまめにLINEで様子を聞きながら活動しています。

仕事終わりによくネコたちの顔を見に行くんですが、「疲れているから今日は早く帰ろう」と思ってはいても、一匹一匹の様子を観察しながら見るので時間があっという間に過ぎてしまって。気づけば日が変わっている!ということもあります(笑)

Q.保護ネコさんたちと過ごす中で「幸せなこと」、反対に「大変だ」と感じることを教えてください。

ネコたちを見ているだけで幸せな気持ちになります。次の日仕事で朝が早くても、ネコたちといると時間を忘れてしまいます。

逆に「大変だな」と感じるのは、保護施設の運営資金や医療費など、お金がかかることです。
「拾ったネコちゃんを保護してほしい」と、助けたい気持ちで施設に連れてくる人もいます。が、ワクチン代や検査代、時には手術が必要になる子がいたりして、その費用が2,3万円かかることを伝えると「払えない」という人が多くおられます。

私たちも無償で預かりたいとは思いますが、現実問題として費用などのことを考えると難しいと感じているのが現状ですね。

Q.「CATS WELCARE」を開設されてから現在に至るまで、特に印象に残っている出来事を教えてください。

▲画像引用:保護ネコ施設「CATS WELCARE」公式ホームページ

「CATS WELCARE」から里親さんへ譲渡したネコが、半年後に「猫伝染性腹膜炎(FIP)」を発症しました。

里親さんが泣きながら電話をくださって、獣医に診てもらったところ「もう助からないと言われた」と……。

しかし、今はFIPという病気は、お金がかかるけど治る可能性のある病気です。獣医の先生はおそらく保護ネコだしお金もかかる点を考慮して「助からない」と言ったのではないかと思います。

ただ、施設から譲渡した責任や、施設開設当初から見ていたこともあり、とても思い入れが強いねこちゃんでした。そのため、「なんとか助けたい!」という一心でクラウドファンディングに挑戦しました。集まった支援金で治療ができ、今ではすっかり良くなって元気に過ごしています。

当時は、一匹の猫のためにクラウドファンディングでお金を集めることに対して、批判的な意見もありました。でも、私たちはとにかくその子を助けたかった。

どんなにお金があったとしてもネコたちを保護する場所がなければ保護すらできませんし、世話するスタッフも必要です。また、施設によってはものすごくたくさんの猫たちをケージにいれて保護している場所もありますが、それも考え方かと思います。

私は「一匹一匹、縁がある子を大切にして助けたい」そんな思いで活動しています。向き合った一匹の命を救えたという意味でも、その猫ちゃんのことは印象に残っていますね。

◎小児科医×保護ネコ活動者としての今後のビジョン・ご意見

Q.保護ネコ活動の今後の活動やビジョンについて教えてください。

今後の活動として、「高齢者譲渡をしたい」と考えています。

高齢者への譲渡は、最後までちゃんとお世話ができない可能性が高いからという理由で敬遠されがちです。でも、年齢が若いからといって最後まで適切に飼えるのかといったら、そうとも言い切れません。

・独身のときにネコを飼い始めたけど、結婚したら飼えなくなった
・仕事の出張などでずっと家に放りっぱなし

などの理由で、若くても適切に飼えない人はいるんです。

高齢者の場合、病気になって飼えなくなる可能性もあるかもしれませんが、元気な間は時間にも余裕があり生活も安定しています。最後の人生のパートナーとして大事に飼ってくれる高齢者と、若いけど適切なお世話ができない飼い主だと、ネコにとってどちらの方が幸せでしょうか。

もし譲渡先の高齢者の方が最後まで飼えなかったとしても、そのネコを引き取り、次の里親さんへ繋ぐことができれば、保護ネコの受け皿も増えるのではないかと思っています。

高齢者の中には、「ずっとペットを飼っていてまた一緒に暮らしたいけど、自分も歳だし最後まで看取れないかもしれないから飼えない」という方もおられます。そのような真面目で責任感のある方ほど飼わないんです。

私たちは、そのような責任感のある方にこそ保護猫を飼っていただきたいと思っています。スタッフ全員でサポートしますし、経済的余裕がある人には施設の支援をしてもらう代わりに、スタッフがその方を支援するという仕組みも作りたいと思っています。

ただ、高齢の方にはSNSでの発信が難しいため、どのように高齢者の方に活動のことを届けるか現在考え中です。

Q.小児科医の視点から保護ネコ活動に関して感じることはありますか?

私は医療者でもあるので、動物だけでなく「人」の側からも考えるようにしています。

高齢化社会になって、孤立・孤独を感じている高齢者は多くいますよね。そこにネコが一匹いるだけで、人もネコも幸せに、笑顔あふれる時間を歩めるんじゃないかと。

もちろん高齢者に何かあったときのシステムを整えておく必要はありますが、そこさえ整えておけば、高齢者にとっても猫にとっても幸せになる道になると思うんです。

また、犬の場合は盲導犬や災害救助犬など、人の社会に役立つことをやることで動物に興味のない人も引き込んで支援をしています。でも猫にはそれがありません。単純にカワイイ存在として、愛猫家さんが愛でる存在。

しかし実際は、ペットを飼っている高齢者は健康で長生きすることが証明されていますし、認知症も少ないといわれています。そのうえ、犬と違って猫は散歩の必要もないですし、要求度もそこまで高くありません。高齢者に寄り添い、癒しと幸せを与える存在として最適です。

高齢者に人生最後の幸せを簡単に与えられる手段であり、人間にとってもプラスとなる存在です。そういう面が普及すれば、もっともっと保護猫たちの行き先も里親さんも見つかりやすくなるのではないかと期待しています。

猫は人間の役に立つ存在だ。
そんな風に世の中の「猫に対する捉え方」から変わっていけばいいと考えています。

◎応援してくださっているみなさんへのメッセージ

Q.保護ネコ施設の活動を応援してくださっている方々に、伝えたいメッセージはありますか?

みなさんのご支援や励ましで受賞できたこと、心から感謝しています。

また、猫ちゃんは好きだし保護猫活動に興味はあるけど、なかなか行動できない方は、できたら勇気を出して一歩踏み出してほしいと思っています。
私たちは、ネコだけでなく人も大事にしたいと思っていますので、一歩踏み出してくれた人は仲間として一緒にやっていきたいと思っております。

みているだけではなく、ぜひ仲間になりましょう!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

Q.最後に次回開催予定の「第4回推し猫グランプリ」の意気込みをどうぞ!

スタッフ共々、優勝目指して頑張りたいと思います!
引き続き応援のほど、よろしくお願いします。

◎保護ネコ施設「CATS WELCARE」様 インタビューまとめ

「ネコ」と「人」の幸せを大切に、保護猫活動家として、小児科医として、多角的な視点から【医療と保護猫の架け橋】となるご活動に尽力されている姿に感銘を受けました。

目の前にある一匹一匹の命と向き合いながらも、ネコに対する世の中の見方や存在意義そのものが変わることを望み邁進されています。

今後は活動の幅をさらに広げるために、NPO法人化に向けて準備を進められているとのこと。「CATS WELCARE」の皆さまのご活躍に期待が高まりますね!!

 

取材:南マイコ
文章:南マイコ/澤井しのぶ

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