「大正モダンな和喫茶」「ヨーロピアン」などがコンセプトで、おしゃれで落ち着いた空間の保護猫カフェ『にゃんこ亭』。ネット上の訪問レビューには「穏やかな空気感が他にはない」とコアなファンが多いようです。
取材をしたときは、東京の十条に3店舗目をオープンしたばかり。開店業務の忙しい中、専務理事の畔柳(あぜやなぎ)様がたくさんお話してくださいました。
東京だけにとどまらない保護活動、確立した経営体勢、SNSからはわからないにゃんこ亭様の想いなど、ぜひ紹介させてください!
◎『にゃんこ亭』とは?基本情報

●ホームページ:https://nyankotei.com/
●YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCxAjxEojYZzJs8qmcWiSMng
■要にゃんこ亭
・住所:東京都豊島区池袋3‐12‐1 松井ビル2F
・X(旧Twitter):https://x.com/kanamenyankotei
・Instagram:https://www.instagram.com/kanamenyankotei/
■上板にゃんこ亭
・住所:東京都板橋区上板橋1−26−7
・X(旧Twitter):https://x.com/kamiitanyanko
・Instagram:https://www.instagram.com/kamiitanyankotei/
■十条にゃんこ亭
・住所:東京都北区上十条2-11-12榎本ビル201
・X(旧Twitter):https://x.com/jyujyonyankotei
・Instagram:https://www.instagram.com/jyujyonyankotei/?hl=ja
◎『推し猫グランプリ2025』猫カフェ部門入賞!
Q.『推し猫グランプリ2025』猫カフェ部門5位入賞おめでとうございます!受賞を知った時のお気持ちを教えてください。
今年も3位以内に入れなかったかぁ、というのが正直な気持ちです。
宣伝とか、けっこう頑張ったんですけどね、なかなか難しいね、とスタッフで話していました。
◎『にゃんこ亭』の当初からぶれない活動理念
Q.にゃんこ亭様の活動理念を教えてください。
活動当初から、「自走できる運営基盤」を理念としています。
カフェの収益だけで施設維持やスタッフの給料などすべてを賄い、寄付に頼らず持続できるようにしています。
いただいた寄付は、猫を救う活動や医療費など、猫のために使いたいんです。
せっかく寄付するなら、やっぱり猫のために使ってほしいと思うじゃないですか。
もちろん寄付で運営することが悪いことではないですし、何が正解かはわからないです。僕らは僕らのできる範囲で、僕らが稼げる分の中で、プラスアルファできることを少しずつ増やしていこうと、スタッフ同士で話しています。
Q.にゃんこ亭様のSNSは穏やかな猫さんたちでいっぱいですね。SNS発信で心掛けていることはありますか?
ネガティブ発信はあまりしたくないなって思っています。
厳しい環境で暮らす猫の存在を伝えるのも啓発活動のひとつですけど、保護猫たちにはこれからポジティブな生活を送ってほしいので、僕らはネガティブな発信は控えるようにしています。
うちのスタッフがみんな、ケアが必要な状態の子を目の前にしたら、写真を撮る前に手を差し伸べてしまうというのが理由かもしれませんが。笑
病状の経過を見たいから写真は撮りたいのですが、落ち着いたときに「あ、忘れてたね」っていつもなるんですよね。
◎活動のはじまりと、「東京ー沖縄」2拠点で奮闘する現在
Q.活動を始めたきっかけを教えてください。

代表理事の小林が、もともとTNR活動(※)に個人で取り組んでいました。その活動の中で、やはり外に戻せない子が自宅に増えていってしまうんですよね。里親さん探しは並行して行っていましたが、限界を感じていました。
また活動の中で知り合う同じようなボランティアさんは、インターネットなどが苦手な高齢の方が多く、ボランティアさんの家に行き場のない猫が増える一方でした。
それに里親さんは、なるべく直接関わって、『ひととなり』をみて託したいよねっていう気持ちが強いので、より困難になります。
そこで、カフェという触れ合う場があればいいんじゃないか、というのが始まりです。
はじめは『要にゃんこ亭』だけで、小さな商店くらいの規模でした。しかし活動の幅を広げる中で、法人格が必要になり、営利団体として活動するために株式会社を作り、と変化しています。
※TNR活動とは?![]() 引用:公益財団法人どうぶつ基金『さくらねこTNRとは』 外で暮らす猫たちを望まない繁殖から守り、一代限りの命をまっとうしてもらう活動です。 |
Q.現在の活動内容を教えてください。
TNR活動を行い、病気や高齢のため外で生き抜けないだろう猫を保護し、カフェを通じて里親へ繋げる活動をしています。
はじめは東京だけでしたが、4、5年前から久米島という沖縄の離島でも活動をしています。保護する猫の数が多くなってきたので、東京の要町と上板橋の2店舗に加え、今回十条の新店舗もオープンさせました。
また病気の子も多いので、東京や久米島にシェルターを設けて保護する取り組みもしています。
久米島は猫が増えすぎていて、猫にとって過酷な環境になっています。行政と地域のボランティアと連携して、計画的に島全体の繁殖抑制に取り組んでいます。
動物病院がない島なので、獣医師も同伴して現地で避妊去勢の手術をします。
4、5年程前から活動していて、やっと次の訪問で島を一周でき、維持管理にシフトできる予定です。
Q.東京、久米島の2拠点で、外猫を家庭に繋ぐ活動をされているんですね。
はい。ただ、外猫ゼロを目指しているわけではありません。
病気で外で生き抜くことが難しそう、地域に増えすぎて糞尿被害がひどいなどの場合に保護します。餌場が確保されているなど、外で生きていけそうな子は地域猫としてリリースしています。
基準は『外で生き抜いていけるかどうか』。
外で生きている子たちが不幸かというと、正直わからないですよね。もちろん外猫には交通事故やノミ・ダニのリスクがありますが、最終的にはわからないんです、本人じゃないと。
また久米島などの地域では、猫が急にいなくなると、ネズミが増えるなどのトラブルも起こり得ます。一定数の外猫も人間社会の中で必要な存在かもしれません。
だから、僕らみたいに家猫に繋ぐために保護する人間ばかりではなくて、「野良猫は悪いものではない、外猫がいることは当たり前、必要な存在だ」という価値観を広める人も必要ですよね。行政も含めて『みんなが地域猫を受け入れる仕組み』ができればいいなと願います。
今は僕らもまだ、目の前の猫を保護して救うことだけで手一杯なんですけど……。
◎多くの猫を救うための計画的なビジョン
Q.今後の活動目標を教えてください。
まず、『終生預かり』の仕組みを作りたいと考えています。
最近の活動の中で、飼い主さんが急に亡くなった、入院したなどの理由による『家猫の保護依頼』が増えています。家猫は外猫と正反対で、人には慣れているけれど、猫とのコミュニケーションが取れない子が多いんですよね。そういう子たちは猫がたくさんいるカフェではなく、はやくお家に繋いであげないといけないね、と考えています。
そこで、猫と暮らしたいけれど高齢だからと自主的に控えている方、保護団体の譲渡条件で高齢を理由に審査が通らなかった方などとマッチングできないかなと。
猫は高齢の方の元で暮らすけど、なにかあったらにゃんこ亭に戻せるように、にゃんこ亭に籍を残します。『終生預かり』のような形で、高齢の方と行き場のない猫が穏やかな時間を過ごせるように、仕組みを作れればと検討中です。
出口を確保することで 入口を広げることができます。保護する猫の数を増やせます。
今は出口を確保できるかどうか、チャレンジしているところです。
Q.他にも、将来的に考えていることはありますか
将来的には、『看取りを目的とした老猫ホームの設立』も計画しています。医療行為ができるようなホームです。
保護された猫は病気や高齢の子が多く、私たちが看取りをすることもあります。正直、苦しめているのか助けているのかわからない……といつも悩みます。
だから獣医師さんとも協力して、できる限りのことをして、少しでも穏やかに最期を見送ってあげたいなと。人間側のエゴなんですけどね。
でも老猫ホームは利益を生みません。今回の新規カフェは、それを見越したオープンでもあります。まずは収益確保を優先し、それから具体的に計画しようと考えています。
また、NPO法人も作りたいと検討しています。
久米島などの各地域でボランティアをされている方が多くいるので、その人たちのために使える資金を集めたいと考えています。活動している人が金銭面で疲弊しないよう、仕組みを構築するのが僕らの役目だと思っています。
◎『にゃんこ亭』さまからメッセージ
Q.応援してくださる皆様へ向けて、メッセージをお願いいたします。
そんな、僕らはたいそうなことを言う立場ではないんです。たまたま猫に拘束されている時間が長いだけなんですよね。
例えばお店に来て猫に触れ合ってもらうだけで、元外猫の人馴れに貢献しています。十分な保護活動の一環です。
お客さん、里親さん、ボランティアさん、投票してくださった方、みんなで活動する中で受賞できたよねって、よかったねって、もっと輪が広がったらいいねって、分かち合えたら嬉しいです。
Q.2026年も『推し猫グランプリ2026』を開催予定です。ご参加いただけますか?
正直、今回で3位以内に入って、来年からは控えようと話していたんです。
でも5位だったんでね、はい、来年も頑張らせていただきます。笑
◎『にゃんこ亭』さまインタビューまとめ
「自走できる運営基盤」という理念は、確実に、安定して、多くの猫を救うため。
機械的なように聞こえるかもしれませんが、それは一匹でも多くの猫を救いたいというにゃんこ亭様のやさしい想いが形になったもの。
印象に残っている猫を聞くと、「病気や亡くなった子たち」だと。
SNSでの発信はあまりされていませんが、にゃんこ亭様は譲渡できない病気や高齢の子たちとも真剣に向き合い、多くの時間を割き、できる限りのことをされています。
利益にならないどころか、経営の負担になり得る「病気・高齢の猫たちまで救いたい」という老猫ホームのビジョン。応援したいですね。
その応援は、東京の猫だけでなく、遠く離れた久米島というあまりフォーカスされない地域の猫にまで届きます。
にゃんこ亭様が願うように、保護活動の輪をもっともっと、みんなで広げていきましょう。
取材/文:大久保ユカコ


