石川県の南西部、川北町にある運送会社「株式会社日章」の事務所には、一匹の猫が勤務しています。その名は「広報部ふく部長」。
会社のSNSには、パソコンや電話、山積みの書類の間で、堂々とくつろぐふく部長の姿が映ります。ときには、電話やパソコン作業中の従業員の腕の中にいることも。
そんな、ちょっと不思議で愛らしいふく部長の仕事ぶりが話題となり、インスタグラムのフォロワーは16万人を超え、メディア出演も多数。いまや全国的な人気者です。
今回は、ふく部長の魅力や日常、そして少しだけプライベートな一面について、主に投稿を担当しているグッピー様にお話を伺いました。
なんと、今回はふく部長も同席してくださいました!
自然体そのままのふく部長と、株式会社日章様の温かい魅力をお届けします。
◎株式会社日章さん × 元野良猫ちゃん
・石川県川北町を拠点に活動する運送会社の広報部長
・Instagram:https://www.instagram.com/nissho_1974/
(フォロワー数:16.6万人(2025年10月時点))
・Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100087512323097
・X(旧Twitter):https://x.com/nissho_1974
・YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC9Jqjlv–Y27xqk2BOLhQVg/about
・グッズ販売サイト:https://camshop.jp/?mode=cate&cbid=2932852&csid=0&sort=n
・書籍販売サイト:https://www.amazon.co.jp/dp/4635590577
≪ふく部長 プロフィール≫
性 別:♀
年 齢:推定12~13才
性 格:温厚
(2025年11月時点)
◎『推し猫グランプリ2025』準グランプリ!
Q.『推し猫グランプリ2025』準グランプリおめでとうございます!初登場での受賞ですね。受賞を知った時のお気持ちや周囲の方の反応はいかがでしたか?
正直なところ、私たちはあまりよくわかっていなかったんです。実は昨年も推薦していただいていたようなのですが、気が付かずそのままになっていまして……。
今年は日本猫ねこ協会からの『推薦されたお知らせメール』を確認したので、とりあえず応募してみました。
そのあと、チャチャさん(「元野良猫チャチャとR me」さん、推し猫グランプリ2024・2025でグランプリ受賞)が、Instagramで「今年も推し猫グランプリにエントリーしました!」と投稿されているのを見て、弊社もフォロワーさんにお知らせと投票をお願いしました。
システムなどもよくわからないままの参加だったのですが、Instagramのフォロワーさんたちが一生懸命応援してくださって、検定にも挑戦して投票してくださったようです。
そして、準グランプリを受賞したことを報告したら、みなさん本当にすごく喜んでくださって。そのとき初めて、「あ、これはすごいことなんだな」と実感しました。笑
■推し猫グランプリ受賞をお知らせしたSNSや結果発表サイトには、温かいメッセージがたくさん寄せられました!
ふくちゃん❤️日章の皆さま❤️おめでとうございます。ふく部長推しとして凄く嬉しいです🥰ふくちゃんにたくさんご褒美お願いしま~す👏
おめでとうございます🎊😍やったー🎉皆さんの優しさ、温かさお昼時間に癒されて会える方数知れず😊心の声も大好き💕大ファン❤️です。
おめでとうございます!いつも楽しく、癒され、そしてなんていい会社なんだと思いながら観ております!ふくちゃん幸せで良かった✨
◎『ふく部長』はこんな猫
Q.ふく部長はどうして会社で暮らすようになったのですか?

8年ほど前、会社の駐車場で数羽のカラスに襲われていた猫を、従業員が保護しました。
ただ、その従業員の家では猫を迎えられなかったため、半ば強引に会社で暮らすことになったのがきっかけです。
瀕死の状態でしたが、奇跡的に一命をとりとめ、そのまま会社で暮らしています。
「幸せになってほしい」という願いを込めて、幸福の“ふく”と名づけられました。
Q.ふく部長の最大の魅力はどこでしょうか?

何事にも動じないところですかね。猫って警戒心が強いものですが、ふくは初めてのことにもまったく動じないんです。
とくに意識的に紹介していたわけではないのですが、SNSでふくを投稿するようになって、その“動じなさ”や人懐っこさが珍しいんだなと初めて気づきました。
あと、人の言葉もちゃんとわかっていると思います。今も一緒に取材を受けていますしね。
いつもならこの時間はお昼寝タイムなんですが、始まる少し前に「インタビューあるけど、一緒に受ける?」と聞いたら、ごはんを食べて準備していたんですよ。本当に、よくわかってます。笑
Q.「何事にも動じない」とのことですが、人や食べ物などの好き嫌いや、苦手なものなどないのでしょうか?
人は誰でもウェルカムですね。
食べ物も好き嫌いはなく、以前はおやつは食べなかったのですが、最近は食べるようになりました。このプルプル体形は、キャットフードだけでできあがっています。笑
あ、ただ猫だけは嫌いなようです。
一度、被災した猫ちゃんを会社で迎え入れようとしたのですが、ふくがシャーシャー怒ってしまい、断念しました。温厚な性格なので、とても驚きました。最後は体調まで崩してしまったので、本当に嫌いなんだと思います。
◎『ふく部長』の日々の暮らし
Q.ふく部長は日々どのような業務をされているのですか?
毎日会社にいて、広報部長として勤務しています。みんなのデスクを渡り歩き、仕事を応援します。
ふくは誰でもウェルカムなので、来客対応もしていて、訪問者のみなさんに撫でてもらっています。
Q.事務所を自由に歩き回って、トラブルなどはないのでしょうか?
それが、全くないんですよね。はじめは猫ってイタズラするイメージだったんですけど、全くしないんです。
機械を倒したり、書類をやぶいたりなどのトラブルは一度もありません。無造作に机に置いたコーヒーをひっくり返したこともないですし。
ふくがいることで、業務に支障が出たことが全くないんです。不思議ですよね。
みんなのデスクを渡り歩くんですけど、うまいことよけて歩いています。.
Q.業務終了後は、どのように過ごされているのですか?

長期連休以外は、毎晩会社で過ごしています。通常は玄関などで過ごしているようです。
会社に寝泊りする人が数人いるので、寒い時期はその人たちのベッドの上に、特別寒いときは布団の中に入っているようですよ。
お正月やお盆などの長期休暇は、会長や私(グッピー様)の自宅で過ごします。
◎『株式会社日章ふく部長』のSNS発信とその影響
Q.なぜふく部長の様子をSNSで投稿するようになったのですか?
もともとは、運送会社としての宣伝目的で立ち上げたSNSでした。ドライバーやドライバー飯などを紹介していて、ふくを載せようとは全く思っていませんでした。
そんな中、私が強引にSNS担当にされてしまって、何を投稿しようか悩んでいたときに、ふと「事務所に猫がいるな」と目に留まり、何気なくふくの日常を載せてみたんです。
すると、「かわいい!」とたくさんの反響があり、気づけば自分の投稿が増え、いつの間にか猫ばかりになっていました。
会社としてふくは当たり前にいる子であって、特別でもなく、「こんな子がいるから見て」というような気持ちではなかったんです。「なんとなく」がはじまりなんです。
Q.Instagramは爆発的に人気が出て、メディア出演も多いですね。会社としての反響はいかがですか?
取引先にもたくさんフォロワーさんがいらっしゃって、行く先々で「フォローしてます」と言われたり、うちの社員が顔出しで出ているので「はじめましての感じがしないです」と言われたりします。
会社に来てくださったお客様も、商談のあとに「ふくちゃんに挨拶してもいいですか?」と撫でて帰ります。
ふくのおかげでうち(会社)のことを知ってくれている人が多く、その場が和むことがよくあります。
私たちにとっては普通の日常なんですけど、その日常が、実は多くの人にとって特別だと気づかされ、毎回驚かされています。
Q.本も出版されるようですね。どのような内容なのでしょうか?
石黒謙吾さん(石川県金沢市出身の著述家・編集者)が、昨年(2024年)に放送されたBS-TBSの『ねこ自慢』という番組を見て、翌日に、熱い気持ちとともに連絡をくださいました。
石黒さんは、泊まり込みで丸一日ふくの密着取材もしてくださっています。
保護されてから部長に上り詰めるまでの過程、誰も知らないふくの真夜中の過ごし方、愉快な同僚たちの紹介など、「この一冊を読めば、ふくのすべてがわかる」そんな本になっています。
ぜひ多くの方に読んでいただけたら嬉しいです。
◎『株式会社日章ふく部長』社会貢献
Q.2024年の能登の震災後、自治体や猫の保護団体へ支援されているようですね。ふく部長やSNSは関係がありますか?
自治体への寄付は、ふくは関係なく、会社から行っています。
保護団体への寄付は、ふくが関係しています。
会社の50周年の記念品を作ろうとしたのですが、以前からふくのファンの方々から「グッズがほしい」という要望があったので、ふくのグッズを作って販売しようという話になったんです。そして売るなら、利益はすべてうちのものにするのではなく、寄付をしようと。
企画当初からこの一連の流れは決まっていて、『会社の50周年イベント』という形で開催させていただきました。
Q.寄付先はどのように決まったのですか?

震災で被災してるワンちゃんネコちゃんがたくさんいるだろうから、その支援がしたいと考えていました。被災動物の保護をしている団体がないか、県庁やメディアに問い合わせて探し、今回の寄付先に辿り着きました。
2024年、ちょうど会社設立50周年の年に地震が起き、豪雨被害も発生しています。
うちは幸い直接的な被害を受けませんでしたが、その最中だったので、なにかしたいという気持ちが強かったです。
◎『株式会社日章ふく部長』からメッセージ
Q.読者の皆様へ向けて、メッセージをお願いいたします。
応援してくれた方がいて準グランプリになれたので、感謝しかありません。
「何回目でやっと検定に受かった」とか、みなさん本当に頑張ってくださったようなんです。
ただただ、ありがとうございますという気持ちを伝えたいです。
Q.2026年も『推し猫グランプリ2026』を開催予定です。ご参加いただけますか?
そうですね、ぜひ。
今年は準グランプリだったので、来年はグランプリを!……と言いたいですが、チャチャさんの猫武将の強さはわかっています。笑
楽しく参加させていただきます。
◎『株式会社日章ふく部長』さんインタビューまとめ
SNSで注目を集めるようになったのは、実はごく最近のこと。
ふく部長が保護されてからの長い間、株式会社日章の皆さんにとって、その存在は「特別」ではなく「日常」でした。
きっとその自然体の優しさ、暖かさこそが、人気の秘訣なのでしょうね。
取材のあいだ、最初から最後まで同席してくださったふく部長。
ときどきこちらをチラリと見たり、大きなあくびをしたり。
「そんなに力入れてたら、いい仕事できないわよ」そんな声が聞こえてきそうでした。
もしかしたらこの一連の流れ、すべてふく部長の策略なのかもしれません。
部長は「そんなの、わたし知らないわよ」と澄ました顔で言いながら、実は壮大な“恩返しプロジェクト”を企てていたのではないでしょうか。
そしてそのプロジェクトは、きっと今も進行中。
これからも、株式会社日章様とふく部長のますますのご発展、心よりお祈り申し上げます。
取材/文:大久保ユカコ

