『推し猫グランプリ2022』で準々グランプリを受賞された『保護猫かふぇ かぎしっぽ』さん。保護団体の保護猫を「猫スタッフ」として預かり、寄付やクラウドファンディングに頼らずあくまで「商売(経営)」としての運営を貫く保護猫カフェさんです。
その運営方法に込められた、猫を愛する代表山中さんの想いをお伺いしました。ゆったりとした関西弁で優しい雰囲気の山中さんですが、厳しいリアルな現状もたくさん経験されており、包み隠さずお話くださいました。多くの方に知っていただきたい内容が盛りだくさんです。
◎『保護猫かふぇ かぎしっぽ』とは? 基本情報・経歴
画像引用:公式ホームページ
・2015年開店、大阪府茨木市のビル3階にある保護猫カフェ
・運営者:山中 勇一さん(優しい関西弁)
・ホームページ:https://kagi-shippo.simdif.com/
・ブログ:https://ameblo.jp/kagi-shippo-hogo/
・Twitter:@kagishippo2015
・Instagram:cat_cafe_kagishippo
厳しい現実から目を逸らさず、SNS発信も積極的に行っています。
◎『推し猫グランプリ2022』準々グランプリ受賞!
Q.『推し猫グランプリ2022』準々グランプリ受賞おめでとうございます!受賞を知った時のお気持ちや周囲の反応はいかがでしたか?
第三回#推し猫グランプリ結果発表 | #OSHINEKO
保護猫かふぇ かぎしっぽにご投票して頂いた皆様、応援ありがとうございました♪♪#推し猫グランプリ
https://t.co/udLfTb7PHh— 保護猫かふぇ かぎしっぽ (@kagishippo2015) June 10, 2022
去年8位だったので、3位になってお客さんがとても喜んでくれました。
保護団体のボランティアさんや、うちに来てくださる方みんなに「投票してね」ってお願いしていましたから。(コロナの影響もあり)お客さんの数は少ないですが、お客さんの家族とかも頑張ってくださったみたいで。
本当にみなさんのお陰ですね。
■準々グランプリ受賞の結果発表ページには、温かい応援コメントが寄せられています。
準々グランプリおめでとうございます!!
かぎしっぽ大好きな人たちがいっぱいで嬉しいです🥰
準々グランプリってすごい。
あるだけのメアドでw
応援したかいがありました。
準々グランプリおめでとうございます
日頃の活動の成果だと思います🙂
毎日お疲れ様です
◎『保護猫かふぇ かぎしっぽ』として保護猫活動を始めたきっかけ・熱意
Q.保護猫カフェ・保護猫活動を始めたきっかけや経緯、活動に対する想いを教えてください。
戻ったニャ!
明日は頑張って働くニャ! pic.twitter.com/UNA2RBq2Dr— 保護猫かふぇ かぎしっぽ (@kagishippo2015) September 18, 2022
僕の場合は、「ねこ助けたい!」とかそんなんじゃないんです。笑
8年くらい前に心臓病になりましてね。今までやっていたデザイナーの仕事が一切できなくなり仕事を退職しました。幸いにも、病気になる前から「いつか猫カフェを運営してみたい」という想いはあったので、諸々の資格は取得していました。
で、このタイミングで「やりたかった猫カフェをやっちゃおう!」っていうのが始まりでしたね。
ただ、猫カフェ始めるにあたって、もし僕がコロッと死んじゃったら猫スタッフさんたちの行く場所がなくなってしまう。それはダメだ!と考えました。
そこで、地域の保護猫さんを『お預かり』する形での運営を考え、「保護猫カフェ」にたどり着いたんです。この形なら、もし僕が面倒をみられなくなっても、この子たちの返る場所はちゃんと確保できるので。安心して営業できると考えました。
Q.保護猫や保護活動の現状について、運営を決意されてから学ばれたのですね。現状をはじめて知ったときはどのように感じましたか?
正直「猫さんなんてなんてそこら辺にいるもんや」って思っていました。でも保護猫カフェを開業するにあたりいろいろ調べていくうちに、現状はよくわかりました。
それでも最初は「助けてあげよう!」とか、「殺処分ゼロにしてやろう!」とか、そんなたいそうな気持ちにはならず。ただ少しでもウチが猫さんを預かることで、「保護団体さんがまた新しい命を助けられる」それくらいの感じでした。
ただ、保護団体さんと一緒にいろんな体験をしていくうちに、少し変わってきています。今は「殺処分をゼロにしよう」ではなくて、「【殺処分される猫】をゼロにしよう」という方針で活動しています。
野良猫や外飼いする猫がいなくなれば、愛護センターなどに持ち込まれる猫も少なくなりますよね。もとを閉めないと、いくら保護しても終わらないですから。まずは目の前の地域で、外にいる猫がいなくなることを目指して活動しています。
◎厳しい現状ときちんと向き合う強い姿勢
Q.活動する中で、特に印象に残っていることはどんなことですか?
猫に関してです。
殺処分をゼロにしようと考えておられるなら、外飼いと野良猫をゼロにする為の行動を先ずとる事が確実に効果があります。
殺処分は殆ど野良猫や不適切な飼育から産まれる子猫たちです。
ペットショップが無くなったとしても殺処分数はそれほどは減りません。
無責任な餌やりはダメ
— 保護猫かふぇ かぎしっぽ (@kagishippo2015) September 15, 2022
そうですね、ひどい状況しか頭に浮かばないです……。
先日伺った住宅は、家の中が糞尿でグチャグチャでした。僕らは靴の上に二重にビニールして、防護服着てやっと入れる、くらいのところです。飼主のおじいさんは、その糞尿の上で寝ていました。もう、ほんとに、グチャグチャで……。
その中から、1匹の猫を救出しました。
多頭飼育崩壊のニュースを時折ニュースなどで目にしますが、たとえ1匹でもダメなんですよ。自分でお世話ができないのに飼っちゃダメなんです。ペット不可の住宅で飼っちゃダメなんです。
Q.そんな悲惨な状態を体験したとき、一番思うことは?
飼う前に、しっかり考えて飼ってほしい。たった1匹でもダメなんです、お世話できないのに飼ったら。販売する側も、ペット飼育が可能なおうちかどうか、最後まで面倒みきれるのかを考えてから売ってほしい。
以前、譲渡会に来ていただいた方に対し、お子様が猫アレルギーということで譲渡をお断りしたことがありました。
そのご家族は「そんなん知らんわ!」って怒りながら出て行って、その足でペットショップに向かいました。そして数か月後に、「アレルギーが悪化したから引き取ってほしい」って連れてきました。しかも「(ネコを購入した)ローンが残っているからローンごと引き取ってほしい」なんて言われまして。苦笑
もちろん、こういったケースばかりではないです。「歳でもう面倒みきれないから」と、猫3匹を老猫ホームにお金と一緒に連れてきてくださる方もいます。
無責任に放り出すのではなく、親戚や知り合いにお願いするのでもいい。その子を最期まで面倒みてくれたら、それでいいです。ただただ、それだけです。
Q.そんな経験や想いが、SNSでのリアルな発信に繋がっているんですね。
画像引用:公式ホームページ
保護団体には女性の方が多いので、あまり強く言える人がいないんです。立場上、強く言いすぎると(角が立ってしまい)助けられなくなるっていうのもありますしね。
Twitterとかホームページでキツイこと(現状の問題点)を書くと、団体への風当たりは強くなります。だから僕みたいに、風を受けても気にしないのが一人くらいは、多少はトゲのあることやキツイこと言わないとね。笑
「かわいい」っていうのは他の保護団体さんや猫カフェさんに任せて、うちは「ダメなもんはダメだよ」っていう情報をしっかり出したいなって思っています。ただ、単純に炎上させるのも違うと思うので、発信のバランスは難しいですよね。考え方はみなさんバラバラですから。
Q.発信について意識していることや気を付けていることはありますか?
発信で気を付けていることは、「猫だけにならないように」ということです。
猫が外にいることによって、猫が殺してしまう命もあるんだよっていうことも発信していかないと。野生動物とかね。野猫を処分していかなきゃいけないこともあるでしょうし、「猫かわいそう」ってだけじゃ済まないことがいっぱいあります。
被害があるなら被害者さんの立場になって考える、そういう発信をしていかなきゃダメだなっていう風には、いつも思っています。
◎「商売」として活動する保護猫カフェの現状
Q.保護猫カフェの運営について、コロナ渦の影響はありましたか?
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正直いうと、とんでもない状態です。コロナがはじまった2年前くらい前の時点でこれは長引くと思ったので、国からの追加融資を申請しました。それでなんとか生きていますが、やはりなかなか厳しいですね。笑
ただ、保護猫カフェとはいえあくまで「商売」なので、寄付に頼るのは僕のポリシー上ダメなんです(寄付をいただける方の好意を無駄にしないよう、店舗には近隣保護団体への募金箱を設置済み)。
こういった現状が続くとどうなるか不安はありますが、まだまだ頑張りますよ。
Q.コロナ禍の影響もあるかとは思いますが、譲渡へのつながりはいかがでしょうか?
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コロナになってからは少なくなってしまい、昨年~今年は年間10匹前後ですね。コロナ前だと、年間30~40匹は譲渡していました。今までの累計だと、店のスタッフ(保護猫)からは200匹近く卒業しています。
店の子たちだけではなく、地元の保護団体さんの譲渡会を開催することもあり、それらを含めるともっともっと多いと思います。
うちは地元が最優先です。まずは“外で暮らす”地元の猫たちがゼロになることを目標として、地元の保護団体さんと協力しています。
Q.保護猫さんたちと過ごす中で感じる「幸せな瞬間」や「大変なこと」を教えてください。
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なにより大変なのは、毎日のお掃除ですね、ほんと。笑
それと、病気の子たちの投薬や点滴も大変です。年取った子とかは特にね。でもそれも含めて、猫なんですよね。
幸せを感じることは、うちみたいなとこ(保護猫カフェや保護施設)からちゃんとした家に卒業していく猫が出たとき。やっぱりいちばん嬉しいですよね。
里親さんからいただいた写真の顔が、うちにいたときと全然違う顔になっていると本当に嬉しいです。うちにいるときはどうしても、『やさぐれた顔』の子が多いですからね。笑
◎『保護猫かふぇ かぎしっぽ』さんからメッセージ
Q.最後に、読者や保護猫に興味がある方へ向けて、メッセージをお願いいたします。
とりあえず猫を飼うときは、確実に室内で飼ってあげてください。大切に飼ってあげれば、不幸になる猫は減ります。適正に飼って、可愛がってあげてください。
それと、無責任な野良猫のエサやリはやめてくださいね。野良の子猫が目の前でカラスに持ってかれるのを見るのは、もうイヤです。
あと、経営が厳しいので皆さん遊びに来てください!笑
寄付は保護団体さんにしていただいて、うちはみんなが遊びに来てくれたら店が回ります。遊びに来てくれたら、売り上げがこの子たちの「ちゅ~る」になります。笑
Q.最後になりますが、第4回『推し猫グランプリ2023』も開催予定ですが、ご参加いただけますでしょうか?
もちろんです!
今度はより一層強力なバックアップをつけて頑張りますので、笑 ぜひよろしくお願いします。
◎保護猫かふぇ かぎしっぽ様インタビューまとめ
代表の山中さんは優しい空気感とは異なり、厳しい保護活動の現状からは目を逸らさず、きちんと受け止めて強い心で活動されています。
保護団体さんを尊敬・尊重され、「僕なんてたいしたことしてませんよ」と言いながら、猫たちのために自分にできることにまっすぐに取り組む姿勢は、とてもかっこよく感じました。
温かい雰囲気の山中さんと穏やかに暮らす猫スタッフさんに会いに、ぜひ『保護猫かふぇ かぎしっぽ』へ訪れてみてください!
その癒しの時間が、多くの猫たちの命に繋がっていくのです。
取材:南マイコ
文:南マイコ・大久保ユカコ